<ベルさんプロフィール>
タイの高校を卒業後、日本語学校に1年半通ったのち、大学・大学院を卒業。現在社会人2年目。
日本の1番好きなところは、ルールに沿ってコツコツこなせる真面目なところ。
日本にはあと2・3年いて、母国に帰ろうと思っている。
【来日前と来日後の日本のイメージ】
—日本に来る前から日本に興味があったんですか?
A.日本といえば、先進国とか真面目というイメージしかなかったし、さほど興味もなかったですね・・・。
家はどちらかと言うと貧しい方だったので、海外旅行もしなかったし。
田舎暮らしだったので、日本人と関わる機会もあまりなかったです。
—なるほど。ではなぜ日本に来ることになったのですか?
タイで1市に1人だけ選ばれる、全額返金不要の奨学金制度があり、それに受かったんです。
英語圏以外の国に留学すると大学の費用は全部してくれて、返済もしなくて良いというものなのですが。
元々整体医療に興味があったので、ドイツ・日本しか選択肢がありませんでした。
どちらでも良いけど、iPS細胞が有名で、タイから近い日本の大学に行くことに決めました。
日本の医療に魅力を感じたという理由もありますが、
たまたま日本に来ることになったという認識の方が正しいかもしれません。
—1市に1人の奨学金を受け取れたなんてすごいですね!
あまり関わりのない日本に来た時のイメージは、どのようなものだったのですか?
真面目にコツコツ頑張れるというイメージがとても強かったです。
これは日本に来て以来、ずっと好きな面でもあるのですが・・・。
きちんとルールに沿ってやるというか、言われた通りにやるというか。
僕は自分で考えて行動するタイプなので、真似できないです。
ー自分で考えて行動できる方が良い気がしますが・・・(笑)
逆に日本人のこうゆうところが嫌だというところはありますか?
日本の会社の『ほうれんそう』が凄く嫌いです。必要な時もあると思うのですが、
そんなに進んでないのに進捗報告をしないといけない時とか、時間の無駄だなと思います。
ある程度成果が出たら報告したら良いんじゃないですかね?
そんな進んでないのに上司に報告を促されるのがもどかしいというか・・・。
【学生生活や就職活動について】
—確かに。昔からある企業になればなるほど、そういう会社が多いかもしれませんね・・・。
ところでベルさんはどのような学生生活を送っていたのですか?
大学時代は勉強中心の生活でした。
そのおかげで成績は常にトップで、大学院も特待生で入ることが出来たのですが。
でもあまり課外活動をしていなかったので、日本人と関わる機会が少なく、友達が少なくて寂しかったです。
それがきっかけで、『タイ語を学ぼう タイ語コミュニケーションブロック』というFacebookグループを創設しました。
はじめは1人で始めたのですが、今ではメンバーが4000人以上になり、日本のトップ教師もこれを使ってくれています(笑)
今でもたまにごはん会を開催して、日本人と話す機会を作っています。
—4000人・・・(笑)大学院へは元々進学したいと思っていたのですか?
大学院時代の話もお聞きしたいです!
特待生になれたので進学しただけなので、元々進学する気は無かったですね。
大学院時代は、そろそろアルバイトをしてみたいなということで、タイ語教師になりました。
今でもあると思うのですが、タイ語教師募集の掲示板に登録して。5人程教えていましたね。
—タイに進出する企業も多いので、タイ語教師はかなり需要があるかもしれませんね。
ところで、ベルさん日本での社会人経験をお持ちですが、日本の企業に改善してほしいところはありますか?
そうですね。すぐに会社をやめていたり、学生期間が長いと、就職活動でフリになってしまいますよね。
すぐにやめているのにもそれぞれ理由があったりするので、少し改善してほしいです。
—確かに、留学生であればなおさら、会社の事情で辞めざるをえないことなどありますもんね・・・。
【日本とタイの今後について】
—タイはどんどん経済的に豊かになっていますが、より経済的に成長するためにはどうするべきだと思いますか?
タイというのではなく、これからはAEC全体で見た方が良いと思います。
今後はEUのようにAECというくくりで見られるようになっていくと思うので。
でもそう考えた時、タイ人は英語が話せないし、物価も上がってきてるから、負けちゃうんじゃないかと心配です。
タイ国内でのビジネスというより、AEC全体でのビジネスに変わっていくと思うのですが、
そうなると共通語は英語になりますよね。
やっぱり英語が話せないのはとても不利になってしまうと思います。
—なるほど。日本人にも言えることですが、AECが発足されたタイだとより必要になってきますね。
周辺諸国は英語を母国語にしているし・・・。
では、AECが発足したことによって、日本との関係はどのようになっていくと思いますか?
タイには日本の工場がたくさんありますよね。
でもどんどんタイ以外のところに移っているんです。
物価も上がってきたし、日本のような技術もない。
だから、タイが日本の物流の中心となって、どんどん拡大していけば良いと思っています。
タイは立地的に凄く良いし、インフラも結構整っていて国民も豊かになってますよね。何より親日国。
『生産』という面で見ればあまり魅力を感じないかもしれないけど、『消費・貿易』という面では、日本にとって凄く魅力的なんではないでしょうか?
お互いに良い貿易相手国として関係を続けていきたいですね。
—なるほど。確かに生産という面ではタイより物価の安い国がたくさんありますが、貿易の中心としてはとても魅力のある国ですね!タイの富裕層は本当に凄いし・・・。
では、いつかタイは日本の経済に追いつくと思いますか?
タイは政府の不正がひどいのですが、そこが改善されれば、20〜30年で日本を抜かすこともあると思います。
でも、日本は貧富の差があまりないですよね。
今は中国経済が日本を抜かしているけど、貧富の差が大きすぎる。
これはタイも同じで、富裕層だけを見れば日本より裕福なのに、食べ物で困っている貧困層がかなりいます。
『国の豊かさ』の基準をどう決めるかにもよると思いますが、このようにトータル的に見ると、
タイが日本を抜かすのは難しいのかもしれないですね。
—そうですね。そういった面では、日本人って本当に恵まれているのだなと感じます。
では、タイが日本を抜かすのが難しいと思うのは何故なんでしょう?
先ほども言いましたが、タイは凄く不正が多いんです。
だからこそ、日本人の真面目なところが本当に好きで、日本は真面目だからこそ成功しているのだと思います。
タイ人には日本人のような真面目さがないので、日本を抜かすことは難しい気がしますね。
ーなるほど。ベルさんが日本人の真面目なところが好きと言っていた意味が、
何となくわかったような気がします。
では最後に、ベルさんの将来の夢についてお聞きしたいです!
夢は2つあるのですが、まず1つ目は、タイに老人ホームを作りたいと思っています。
タイは今日本人がかなり移住していて、日本人村も出来ているんです。
仕事を退職してから移住する人が多いので、高齢の方も増えているのに、老人ホームが少なくて。
僕は奨学金をもらって日本の大学に行くことが出来たので、タイに貢献したいという思いがものすごく大きいんです。
だから、その老人ホームで日本にいけないタイ人が日本の技術を学べたりしたら面白そうだなと思っています。
人口がどんどん減っていく田舎に日本人で技術のある老人を呼んで、
そこにタイの若者を集めたら、田舎が元気になっていくじゃないですか。
僕は田舎出身なので、地方を活性化させたいんですよ。
もう一つは再生医療です。元々医療に興味があって日本に来たので、こっちにも手をつけていきたいなと考えています。
—おー・・・。再生医療は全くわからないけど(笑)、老人ホームは凄く面白そうですね!
ベルさんの今後のご活躍、楽しみにしています!
ライター:弓場絵里加